「酷道」はなぜ存在するのか
「国道」と言われたら、どんな道を想像しますか?
- 信号や横断歩道がズラッと並んでいる
- 車がビュンビュン引っ切り無しに行き交っている
- 道が綺麗で走りやすい
多くの人がこんな道を想像するでしょう。
しかし、現実にはこれらのイメージとはかけ離れた「国道」が存在します。
車2台ほどの道幅もないのは当たり前、ガードレールがあるのは親切設計、アスファルト舗装がないことも…。
このような"国道とは思えないほど酷い状態の道"を、マニアは「酷道」と呼びます。
なぜそんな酷い道が、国が管理し、国の幹線とされる"国道"に分類されてしまっているのでしょうか。
結論から申し上げますと、酷道の正体が、国道として整備されることを待ち続けている元地方道だからです。
そもそも"国道"とは
酷道について説明する前に、"国道"について説明しなければなりません。
国道その他一般道路を管理するための法律に"道路法"というものがあります。この道路法の第5条には「国道の条件」が書かれています。
以下がその条件です。
- 県庁所在地及び経済上、政治上、文化上重要な都市(以下"重要都市")を連絡すること
- 重要都市及び人口十万以上の市と、"1で規定された国道"及び"高速自動車国道"を連絡すること
- 二つ以上の市を連絡し、"1で規定された国道"及び"高速自動車国道"に達すること
- "港湾法"で指定された港湾、重要な飛行場、国際観光上重要な場所と、"1で規定された国道"及び"高速自動車国道"を連絡すること
- 国土の総合的な開発又は利用上特別の建設又は整備を必要とする都市と、"1で規定された国道"及び"高速自動車国道"を連絡すること
この5つが国道に要求される条件です。
ところで、"その1"以外の条件に「"1で規定された国道"及び"高速自動車国道"」という文言が共通して入っているのが気になりませんか?
"1で規定された国道"というのは、国道1号~58号までの、いわゆる「2桁国道」と呼ばれる国道のことです。数ある国道の中でも特に重要で交通量が多く、国の交通網の根幹とされています。
"高速自動車国道"というのは、高速道路のこと…ではありません。「高速道路」と呼ばれる道路の中でも、特に"高速自動車国道法"という法律の管理下に置かれているもののことを指します。詳細は省きます。
この5つのうちいずれか一つを満たせば、それ以外に要求される条件は何もありません。車が通れなければいけないとか、舗装されてなければならないとか、そういった要求は一切されません。これが"酷道"のごとき悪路が存在できる理由です。
"地方道"とは
"国道"の対になる存在として"地方道"というのがあります。読んで字の通り、"地方自治体"が管理する道のことです。
"地方道"という単語は道路法には登場しない、一般人が勝手に作った造語です。法律に登場するのは"都道府県道"、"市町村道"です。これらの道の要件については道路法第7条及び第8条に書かれていますから、気になる方は下のサイトをご参照ください。
主要地方道
地方道の中でも、「特に主要である」と国交省大臣から指定を受けている路線があります。それが"主要地方道"です。原則として地方道の管理費は、全てその地方自治体が賄わなければなりませんが、主要地方道に指定されれば、国から補助を受けることが可能になります。
国道は無から生まれる訳ではない
国道は、何もない場所に「ここに国道を作る!」といって、ゼロから作られるわけではありません。
既存の主要地方道が「国道の資質有り」と国交省に認められ、指定されることで国道が誕生するのです。それから必要に応じて"国道"として整備されます。
なぜ酷道が生まれるのか
先も述べました通り、主要地方道の整備に当たっては、国から補助を受けることが出来ます。
しかし現実は厳しく、国から降りる補助金はスズメの涙です。県単体では経済力が乏しく、道路整備に回せる予算がありません。
そこで、整備したい道路を国道にして、国家の潤沢な予算を投入してもらい、"国道"として整備してもらう…という手段がとられました。
このようにして生まれた国道は、整備されるために国道になった訳ですから、"酷道"となってしまっていることについて、とても納得がいきます。
上のリストをご覧ください。星4、星5にランクインしている国道の多くが300番台400番台の、指定されて日が浅い国道です。
彼らは指定されたその日から、ずっと整備されることを待ち続けているのです。