日本の交通を研究する会【記事】

youtubeチャンネル「日本の交通を研究する会」の文字起こし版です。

明石海峡大橋の凄さについて解説【淡路島日帰り旅行-1】

f:id:erizin:20200215152248j:plain

 神戸市の西の端:垂水の街の地下には垂水トンネルなる道路トンネルが埋まっています。全長3200メートル、3車線分の幅を持つ大型のトンネルです。

 このトンネルを抜けると一気に視界が広がり、瀬戸内海とその向こうの淡路島、そして明石海峡大橋の優美な姿が目に飛び込んでき、淡路、あるいは四国の旅が始まるんだなと予感させてくれます。

 私が最も好きな道路風景の一つです。

 さて、この明石海峡大橋が、完成から20年以上経った今もなお世界最大の吊り橋の座をキープしているのは有名な話ですが、主塔の高さだとかメインケーブルの重さだとか、そういったことについて知ってる人は少ないのではないのでしょうか?

www.nicovideo.jp

本記事はこの動画の文字お越し版です。是非動画もご覧ください。

 

主塔は実質日本一の塔だった

f:id:erizin:20200215152816j:plain

 明石海峡大橋を間近から眺めると、まず2本の主塔と、そのてっぺんから生えてるメインケーブルが目に入るはずです。どちらも吊り橋の特徴的な構造ですね。

 特に主塔は海抜300メートルの高さがあり、対馬のオメガタワーが解体された平成9年から、スカイツリーが300メートルを突破した平成22年初春までの間は、東京タワーに次ぐ日本二位の高さを誇っていました。

 しかし二つの塔の高さを単純に比較するのは不平等なことの様に感じます。なぜなら、東京タワーが地上に建っているのに対し主塔は海上に建っているからです。当然海面下にも構造があります。海の上に浮かんでいるわけじゃありませんから。

 もし、明石海峡の水を全部抜いたのなら、主塔の高さは地上370メートルにもなります。対する東京タワーの高さは地上333メートル。主塔の方が40メートル近く高いことになりますね。

 

ケーブルの重さは主塔より重い

 主塔に比べると地味に見える鋼鉄のメインケーブルですが、実はその質量は非常に重く、主塔二基の合計重量よりも遥かに重たいのです。主塔の合計は4万6千トン。一方でメインケーブル2本の合計は5万7千トンもあります。あの戦艦大和の基準排水量が6万3千トンですから、これが如何に重いかが分かるでしょう。

「本当にそんなに重たいの?」私もそう感じましたが、ケーブルの直径が112センチ、長さが1本4090メートルであることを考えれば妥当な重さと言えます。

どうやって工場から持ってきたのか?

 そんなトンデモナイ重さのものをどうやって工場から持ってきたのか。

 実はあのケーブルは1本の巨大な鋼線という訳ではなく、太さ5mmの素線127本を1ストランドとし、そのストランドを290本より集めたものなのです。

 まず工場で素線を纏めて一つ100t程度のストランドを作成し、それを工事現場まで持ち込んで繰り返し架線していくことで、巨大な一つのケーブルを作り上げました。

 

アンカーブロック

f:id:erizin:20200215223038j:plain

 もう一つ、吊り橋特有の構造として"アンカーブロック"が挙げられます。橋の端部にあるため、あまり目立ちませんが、最重量級の構造物です。アンカレイジとも呼ばれます。

 これは、メインケーブルにかかる張力を受け止めるためのブロックです。なので非常に大きく、そして重くなくてはなりません。

 この橋のアンカーブロックの質量は淡路側35万トン本州側37万トン。人の平均体重が55キロ程度なので、636万人分の重量を持っていることになります。兵庫県の総人口が500万ちょっとなので、兵庫県民の総体重よりも重たいことになりますね。

 本州側が2万トン重くなっているのは、恐らく地盤が悪かったからだと思われます。

 

主塔の土台

f:id:erizin:20200215203711j:plain

 平成7年1月17日、M7.3の兵庫県南部地震が発生しました。震源明石海峡付近、つまりこの橋のほぼ直下です。この地点で工事は、主塔、ならびにケーブルの架線が完成しており、あとは橋の本体となる補剛桁を吊るすだけという段階にまで達していました。当然工事は一時中断され、地震による影響の調査が開始されました。結果として、地盤そのものが移動したことにより、主塔間が1メートル延びてしまっただけで、このまま工事を進めて問題はないということになりました。

 これほどの巨大地震が直下で発生してもビクともしないなんて、一体どんな基礎なんだ…。

 実は土台は平らに均した海底に置かれているだけで、杭などは何もないのです。この土台の質量は実に100万トン。塔一基の重量2万3千トンに対して圧倒的に重いです。この特大質量を以て、重心を下に持ってきて、倒れないようにしているのです。